相変わらず物欲から解脱できずに彷徨っている60代が、
今回、囚われたのは、TIMEのフレーム・フルイディティ。

たまたま立ち寄った店で2年落ちの2017モデルが処分価格で
展示されていた。憧れのTIMEの旧タイプのロゴが
ダウンチューブにしっかり入っているフレームだ。
トップチューブ長を店員に聞くと540mmだという。
身長175㎝の僕には、ちょうど良いサイズだ。

「初めてツールで勝ったカーボンフレームを送り込んだ
TVTというメーカーの系譜をLOOKと共に引継いだカーボンフレームの
パイオニア」とか
「ロードバイクメーカーでは唯一、BMWのボディや航空機にも使われている
RTM工法というカーボン成形方法を用いて、カーボン糸から編み上げて、
フランスの直営工場で製造される」とか
「2017年のTIMEのラインアップは、エアロタイプ、ヒルクライム、エンデュランス
といった各カテゴリーに特化した3モデルで、いずれもそれぞれのカテゴリーの
フラッグシップ、入門機とか廉価版なんて設定はない」などなど物語満載。
今のカーボンフレームの流行になっている
上下異径のコラムも左右非対称のチェーンステーも
タイムが騒ぎもせずに、やってのけた技術だ。
ロードバイクを趣味とする人ならば、
一度は、候補に挙がるブランド。 いわく・・・いつかはTIME。

現在のTIME社は、創業者のローラン・カッタンが急逝し、
彼がTVT社から引き抜いた天才エンジニア、ジャン・マルクも引退して、
フランスのスキー製品大手のロシニョールグループの傘下に入った。
製造設備もロシニョールグループの工場の中に移動したようだ。
2018年モデルから、カラーデザインがガラリと変わって、
TIMEのロゴも変わってしまったのは、そのせいかもしれない。
工業製品のデザインとしては、小綺麗に纏まっているのだろうが、
保守的な趣向の僕には、タイムのロードバイクのデザインの
伝統や熱のようなものが抜け落ちているように見える。
昨年発売されたNEWモデルは、同じ設計のフレームで、カーボンの質を落とした
廉価版が設定されている。以前のTIMEなら、絶対になかった設定だ。
そちらの方が、ビジネスにはなるのだろうが。そのうちアジア生産の
安いTIMEが量販店に並ぶ時代も来るのかもしれない。
(カリスマ創業者達が去って、組織やそのプロダクツがだんだんと
熱が冷めるように凡庸になっていく様を、僕はすでに体験している。)

暗い妄想はともかく、目の前に現れた2017年製のフルイディティは、
TIMEのモデルのカラーリングが変化する前の最後のモデルで
僕にはど真ん中のストライク。スローピングの度合いが
今のエモンダよりゆるく、ホリゾンタルに近いところもストライク。
というより、それ以外にEMONDAデザインには特に不満はなかった。
ただEMONDAにはCAAD10のような思い入れもない。
最初に乗り始めたのがホリゾンタルだったので、トップチューブと
シートチューブの交差点がリアタイヤの上部より低いのは、
なんとなくカッコ良く見えなかった。

結局はTIMEのロードレーサーであることがストライク。
まるで僕の為に天が用意してくれたフレームに思えた。

一週間ほど冷却期間を置いたのだが、またしても見事に物欲に負けてしまって
自己嫌悪に陥っている。
TIMEフルイディティ